会報『日本と中国』

トップページ > 会報『日本と中国』 > プラットフォーム一覧 > 2016年8月1日号 『EU「危機」の行方と日中関係』

プラットフォーム詳細

プラットフォーム 橋本 逸男 ― (公社)日中友好協会副会長 外務省OB 元大使 前東北大学教授 『EU「危機」の行方と日中関係』

2016年8月1日号

小平や中国人士の魅力的な人柄と、日本側がそれに魅了されて友好往来が発展した姿を書こうとしていたところに、英国のEU離脱が飛び込んで来た。日本の姿勢、日中関係のあり方にも、大きく関係して来る問題であり、以下、拙速を顧みず、些(いささ)か論じたい。
 「英国どうした?」と思う。国民投票に付すとの判断も、国民の投票結果も、その後の再投票を求める署名活動も、英国らしくない。
 EUは、独仏を中心に、政治、経済・金融から司法、軍事力の統合、やがては、国家主権の止揚までも構想した、人類史的な「壮挙」である。理想・理念先行的な姿、原加盟に続き陸続と参加する国々の多様性、独の突出した存在感、ロシアへの姿勢の強さ等、「問題」を抱えつつ、当初は逡巡した英国の参加も得て、「前進」している筈であった。
 独の突出を嫌ったのか、栄光ある大英帝国のEU埋没を嫌ったか。中・下流層の「反乱」か、単なる政治的誤算なのか。何(いず)れにしても、随分「軽やか」に判断したな、との思いが残る。それにしても、独等が英国に、離脱の早期交渉を迫る姿は、明快というより、 殆(ほとん)ど「いびり出す」如き姿勢で、英国の「残留派」は勿論、「離脱派」でさえ、寂寥(せきりょう)感を覚えていよう。「流石はドイツ!」であるが、「何とやらの鯛」との喩(たと)えもあり、EU側も英国を「失う」ことの意味を熟考すべきであろう。
 「リーマン・ショック以上の打撃」として、経済面の損失を懸念する声が喧(やかま)しいが、政治的、理念的損害の方が、遥かに重大であろう。日本は、友好的な善意の第三者として、英国と独・EU側の間に立って、意思疎通や利害調整の「支援」、助言等を試みてはどうかと思う。
 経済面でも、英国その他への支援、協力は、大いに行うべきであろう。この面で、中国と協働、協調ができれば、大変有意義であろう。経済分野発でEUが瓦解(がかい)、弱体化するのを防ぐことに貢献し、その過程で、日中間に、麗(うるわ)しい協力関係が再構築できるなら、素晴らしいではないか。