会報『日本と中国』

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プラットフォーム 寺沢 秀文 ― 満蒙開拓平和記念館専務理事 長野県日中友好協会副理事長 『不都合な忠実に向き合う』

2015年9月1日号

「満蒙開拓という名前ぐらいは知ってたけど、まさか中国人たちの家や農地を安い値段で強引に立ち退かせて日本人の開拓団が入っていったなんて全く知らなかった。中国の反日運動を見て、なんで中国人は日本をあんなに嫌うのかなあと思ってたけど、そんな歴史があったんだったら無理も無いかもと思った」
 これは長野県内の高校生の感想である。ここ数年、地元の高校などから平和学習の一環として講演に招かれることも多い。きちんと話せば高校生たちは瑞々しい感性で受け止めてくれ、こんな感想文を書く生徒もいる。しかし、残念ながら日本の若者の多くは近現代史、特にこの100年ほどの間に日本がアジアの中でどう過ごしてきたかなどの歴史認識が極めて乏しい。
 だが、それは若者たちが悪いのでは無い。きちんと教えていない私たち大人が悪いのだ。また学校だけに押し付けるのではなく地域教育、家庭教育の中でも教えていかなくてはならない。教育に関しては中国側にも要望したい。確かにかつての日本による侵略の史実などを中国の子供たちに教えることも必要だろう。だが、それだけを繰り返していたら日本嫌いの若者が増えるばかりだ。かつての日本の侵略行為だけでなく、日本が戦争に対する反省の下、「平和憲法」を守り、戦後70年間一度も戦っていない平和な国であり、今の日本人の多くが平和を愛する国民であることもきちんと教えて欲しい。そうでなくてはアンバランスだ。勿論、そう要望する以上、まずは私たち日本国内において若者たちに近現代史の史実をきちんと教えることが先決だ。
 その一助にと「満蒙開拓平和記念館」は民間主導で建設、維持され、多くの来館者がある。日本人開拓団の苦難、涙などの「被害」も語り継ぐも、それ以前に中国の人々などに多大な犠牲を強いたという「加害」の面にもきちんと向き合っている。例え「不都合な史実」であったとしても、これにきちんと向き合い、戦後70年の今、二度と戦争をしないことを改めて誓いたい。